「ビゴー日本素描集」「続ビゴー日本素描集」 (岩波文庫)   2001.10


■動いている着物姿

明治の日本人の姿を生き生きと、茶化して描いたビゴー(フランス生まれ)

「みんなが着物を着ていた時代」は、残念なことに「写 真や映画が少なかった時代」。だから昔の人のごく自然な着物姿(誇張されたり美化されていない)を見る機会は、意外なほど限られています。

ビゴーはそんな時代の日本人をスナップ写 真の感覚で描き残しました。

「動いている日本人」の絵には、発見がいっぱい。着物の自然なドレープを丁寧に描いているのも見逃せません。(ビゴーの絵には、外国の人が描きがちな、‘いい加減なエキゾチック着物’がないのです。)

またわざわざ「日本人のちょっと恥ずかしい状況」を切り取って描いてある。現代でいうなら、「コンビニでウ●コ座り」のような(笑)

日本人の脱力ポーズを外国人の目でせっせと描いてるから、たまったものじゃありません。これを見ると「着物を着れば、シャンと背筋がのびるざーます。」的な決まり文句は、吹き飛んでしまうことでしょう。

登場人物は、さんま・所さん・ロンブーあつし、のように鼻と口元が「ダブル三角・by幸田文」の人が多い。(「ダブル三角」の顔は幸田文によれば「戦後には目立って少なくなっ」たのだそうです。)


■着物と足の向き


ビゴーの絵を見ると、女性達のつま先は内側をむいていません。どちらかというと外向きで、大地にガッシリと立っています。

ビゴーは日本人の風習をオーバーに表現します。もしも 一般の女性が「着物で内股」だったら、外国人の彼は、おおいに珍しがったはず。決して見逃すことなく東洋の不思議な風習として茶化して描いたと思うのです。それを描いていないということは…。

そんな中で2箇所、女性を極端内股に描いている絵があります。
それは芸者が鹿鳴館でダンスを習う、というシーン。
芸者さんは、かなりの内股だったようです。


ビゴーとは関係ありませんが、幕末〜明治の写真。つま先の向きをみてください。

【追記・2006年4月】 フランスのリュミエール社が明治の日本を写 した映像を、国立近代美術館フィルムセンター7階の常設展(京橋)で見ることができます。まるでビゴーの絵が動き出したような映像で、彼は見たままを素直に・正確に・描いていたんだなあ、と実感できるはず。(帯のボリューム感や、着物のスソが広がっている感じ、山高帽をかぶる庶民など。)

■暑い時には薄着で

「続ビゴー日本素描集」には、男が「ふんどし姿」でチンタラ歩いている絵が何枚かあります。

これこそ、暑い島国の正しい過ごし方?福沢諭吉でさえ、全裸で勉強していたそうですから…

今、21世紀。お洒落なビルに冷房ガンガン、酷暑でもスーツを着て、水虫なのに靴履いて。新しいCMは健康飲料ばっかり、冷え切った女の子達は、生理不順でアロマで足湯、にもかかわらず裸足でミュール。なんだかとっても不毛だニャー。この世界って一体、何…。

ビゴーの絵を見ると、私たちは今まで西洋人・都会人・未来人のフリをする為に、相当無理して生きてきたんだな、ホントご苦労様だったよな、って、しみじみ思います。

 

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